概要
トウェイン、フォークナー、ボールドウィンから、モリスン、マッカラーズ、ホワイトヘッドまで――
政治がそれをいかに忘却しようとも、文化や個人のあり方のうちに、言い換えれば、アメリカン・デモクラシーの視界のきわで熾火のように熱をたくわえ、人種は潜伏しているのである。人種を持続的に思考するには、その様々なる潜伏の場を、まず探りあてる必要がある。――序章より目次
序章 人種、あるいはアメリカのエコロジー
第Ⅰ部 黒人が生まれ出づる〈生の論理〉
第一章 母の消去
一 自由人の楽園、奴隷の地獄
二 奴隷の母のトポロジー
三 人種に書かせた物語
第二章 「黒い果実」としての肉体
一 黒人の在り処
二 サウスランド再訪
三 剝き出しのメロドラマ
四 めぐりあう南部
第三章 生を肯定する理由
一 反・反出生と想像力
二 奴隷制下の自律性と性的充足
三 性の正視と愛する力
四 サハラの時間、獄としての性
第Ⅱ部 生まれ出たものが〈住む条件〉
第四章 アメリカの礎
一 一六一九マインドと文学批評
二 先住民と荒野の余剰
三 「我が国の事情」と「人間の枠組み」
四 謎の遺産と消したい過去
五 環大西洋奴隷貿易と帝国の文手箱
第五章 奴隷制廃止の情動
一 扇情のアダプテーション
二 「鉄道」以前のニューポートにて
三 思考と感情/情動調律
第六章 耐え忍ぶ者の透視図
一 解放への長い道のり
二 闘争の意味を問う
三 依存の詩学
四 絆を断ち切らない理由
第Ⅲ部 生を遷移させる〈人種=生態〉
第七章 生態実験のような人生
一 南部小説と不詳の「南部」
二 記憶が信じたカラーライン
三 灰色の平和、無数の声
第八章 「白い屑」に映された暗黒
一 ハーストンが歌った唄
二 南部の復興とクラッカーの上昇
三 クラッカーの上昇+他者の抑圧=アメリカの膨張
第九章 安い命がつながるところ
一 驚異的な人間性
二 抵当に入った心
三 人の命が安い風土
終章 アメリカン・デモクラシーのエコロジー
あとがき
初出一覧
引用文献一覧