1. 新刊書
  2. 増田久美子著, 『家庭性の時代 セアラ・ヘイルとアンテベラム期アメリカの女性小説』 小鳥遊書房, 2021. 7. 16. 四六判278頁, 2,800

増田久美子著, 『家庭性の時代 セアラ・ヘイルとアンテベラム期アメリカの女性小説』 小鳥遊書房, 2021. 7. 16. 四六判278頁, 2,800






概要

家庭から「市民社会」へ……

南北戦争前夜(アンテベラム)期、女性を家庭空間に限定し「反フェミニスト」のレッテルを貼られたセアラ・ヘイル。しかし、彼女の小説テクスト に書き込まれた「家庭性」をめぐるレトリックの深層を読み解くと、同時代の誰よりも「女性の向上」に尽力し、家庭性や「男女の領域 分離」を唱えたヘイル像とその真意が浮かび上がってくる。



目次

序 章 セアラ・ヘイルと「家庭性の黄金時代」

一.(反)フェミニストか帝国主義者か──セアラ・ヘイルのペルソナ

二.家庭性イデオロギーと「男女の領域分離」論争の展開

三.家庭から「市民社会」の構築へ

 

第一章 「共和国の母」から「慈悲深き帝国」時代の女性たちへ

──『ノースウッド』にみるセアラ・ヘイルの思想的変遷と「慈善」のイデオロギー 

一.「共和国の母」から娘へ

二.一八二七年版テクストにおける共和国市民の美徳、模範的女性像、チャリティという「慈善」

三.一八五二年版テクストにみる「慈善」のジェンダー化

 

第二章 「女性の領域」を読む女たち

        ──『女性講演家』のジェンダー・ペダゴジー

一.アメリカ初期演説文化と女性による講演行為

二.誤読される女性講演家

三.実践的テクストとしての『女性講演家』

 

第三章 ボーディングアウトする女、家庭にしがみつく男

            ──(反)ボーディングハウス小説の場合

一.ボーディングアウトする白人中流階級

二.(反)ボーディングハウス小説というジャンル

三.『ボーディングアウト』のパラドクス的な語り

四.混沌と化す「客間」、神聖化される「書斎」

五.リパブリカニズムへの回帰

 

第四章 分断された家庭、創出される良妻

──ハウスキーピング小説の場合

一.危機に立つ「女主人」——アンテベラム期の家事奉公事情

二.白人中流階級家庭の「良妻」をつくる

三.家庭空間を分断する

 

第五章 リベリア礼讃

──セアラ・ヘイルのアフリカ植民思想にみる男性性の危機・回復・依存

一.ペイトン氏の「男らしさ」の危機──福音主義的男性性とリベリア植民運動

二.ペイトン氏の「実験」における男らしさのゆくえ

三.「依存」の構造──福音主義者の男性と消された女性           

 

第六章 共和国の娘たちへのクロニクル

──『女性の記録』における家庭的歴史の語りと「女性市民」の形成

一.「女性の領域」から市民社会へ──『女性の記録』の評価をめぐって

二.母親であることの不当と苦しみ──家庭的歴史の「心情」の語り

三.アングロサクソニズムと女性の市民性

四.「母」でなく「妻」でなく、「女性市民」を記録する

 

終章 切り貼りされる自己語り

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参考文献

あとがき

アメリカの歴史と文学年表・ヘイル略歴

索引