概要
エイバブを悲劇的な英雄と見なすのでも、イシュメイルをエイバブの批判者と見なすのでもなく、メルヴィル自身も自覚していなかった運命観を読みとる。
それは、エイハブがモービィ・ディックを追跡したように、生に対する最も深い肯定がなされている『白鯨』というテキストそのものを探求(=精読)する行為である。
目次
はじめに
一 クィークェグの樫棒
二 イシュメイルの急場の産婆術
三 イシュメイルの、エイハブとの近さと隔たり
四 エイハブの狂気のかたち
五 個体であること
六 エイハブの悪と神の悪
七 〈性格〉としての〈運命〉
八 〈全体〉の相貌——海・白さ・捕鯨
九 鯨のレッスン
十 鯨の〈かたち〉を歌う
十一 「物語作者」イシュメイルの脱皮
十二 いかにして〈中心〉に向かうか
十三 世界と交わる
註
初出一覧
エピローグ