1. 新刊書
  2. 山辺省太著, 『フラナリー・オコナーの受動性と暴力——文学と神学の狭間で』 彩流社, 2019. 3. 25. 四六判284頁, 3,000

山辺省太著, 『フラナリー・オコナーの受動性と暴力——文学と神学の狭間で』 彩流社, 2019. 3. 25. 四六判284頁, 3,000

概要

アメリカ南部を代表するカソリック作家、フラナリー・オコナー(1925-64)。

彼女の文学世界は、なぜグロテスクで暴力的な光景に満ちているのか。

暴力性は、どのように神の倫理と結びつき、神の恩寵の瞬間を迎えるのか。

暴力と恩寵が混在したオコナーの文学/神学世界において、どのように登場人物の主体性が奪われ、神の啓示の前で受動的な存在になるのか、具体的な作品分析をとおして、オコナー文学が内包する倫理に着目する。


目次

序章 文学と神学の狭間で

  受動性と主体/オコナー文学と新批評

  暴力、受動性、レヴィナス/日本のオコナー研究と本書の位置づけ

 

第I部 秘義における物質と知覚

第1章 彷徨の身体

      ──『賢い血』と不安定な神の表象

  神聖と冒瀆/浮遊する眼差しとグロテスクな形象

  故郷の喪失と不気味なもの/善としての彷徨

第2章 物質と秘跡のリアリティ

      ──「グリーンリーフ」と「川」にみられる文学の美学と創造世界の表象

  秘跡と受肉の芸術/リアリティと知覚

  「グリーンリーフ」と「川」におけるリアリティ

  人間と物質の類似

 

第II部 受動性という倫理──他者の歓待と神の恩寵

第3章 倫理、暴力、非在

      ──「善人はなかなかいない」と「善良な田舎者」における善と他者

  経験と倫理/同一性の記号としての「善」

  暴力、隠蔽、顕在

第4章 アクチュアリティ、グロテスク、「パーカーの背中」

      ──行為、融合、再創造

  グロテスクな創造/行為と再創造

  暴力、受動性、融合

 

第Ⅲ部 オコナーの終末的光景──想像力、時間、現実性

第5章 不可解な黒さと虚構の力学

      ──「作り物の黒人」と「高く昇って一点へ」の差異と終わりの意識

  黒さ、原罪、人種/黒さと神の恩寵/本物の黒人と作り物の黒人

  贖罪の時間、虚構、現実

第6章 故郷、煉獄、飛翔

      ──「永く続く悪寒」における神の降臨と時間の詩学

  煉獄という過程/境界侵犯への憧れ、あるいは煉獄からの離脱

  供犠、イメージ、飛翔

  アズベリー・フォックス、フラナリー・オコナー、進化の贖罪

 

第Ⅳ部 共同体/国家における政治と宗教

第7章 農園から共同体へ

      ──「強制追放者」におけるアイデンティティの構築と崩壊

  戦争、死、アイデンティティ/南部の労働者からアメリカの市民へ

  農園主から南部人へ/一時の共同体、無限の共同体

第8章 生の政治と死の宗教

      ──『激しく攻める者はこれを奪う』

  公的なアメリカと私的な南部/生の享受と死の洗礼

  アメリカの市民宗教、ターウォーターのキリスト教

第9章 偽善と暴力の相補

      ──「奴隷解放宣言」と「高く昇って一点へ」

  奴隷解放宣言、神話的暴力、神的暴力/オコナーの曖昧な人種態度

  偽善という神話的暴力が生み出すもの

  計測可能な正義の危険性