概要
たった一枚の紙幣にも、膨大な情報が詰まっていて、無限の「読み」の可能性を提供してくれる。ドルという紙幣とアメリカ文学作品の双方が、いずれも紙を媒介として、いかなるストーリーを紡いできたのか?
アメリカにおける紙幣のあり方の変遷をたどりながら、その時代時代に発行された紙幣のデザインをテクストとして読み、同じくフィクションであるメルヴィル、トウェイン、ボーム、ジャック・ロンドン、フィッツジェラルド、ウィリアム・バロウズ、ポール・オースター等の文学作品における想像力と通底するものを探る野心的アメリカ文学評論!
目次
序章 ドルと紙幣のアメリカ文学
第一章 J・S・G・ボッグスについて
—紙幣と文学の比較研究のために—
第二章 複製への抵抗
—バートルビーと貨幣、そして解釈—
第三章『ぼろ着のディック』の見た目/出現アピアランス
—読むこと、読まれることと社会的上昇—
第四章 トウェインの書いたグラントのサイン
—「どちらが夢か?」とサイン・主体・金銀複本位制—
第五章 紙の上のエメラルド・シティ
—『オズの魔法使い』と紙幣制度—
第六章 ジャック・ロンドン 有限会社カンパニー・リミテッド
—『暗殺局』における作者と資本主義—
第七章 広告に似る男
—『グレート・ギャツビー』と時間と貨幣—
第八章 ウィリアム・バロウズは地域通貨の夢を見るか?
—紙幣に見るアメリカのグローバリゼーションとオルタナティヴ—
第九章 (E)X Marks the Spot
—ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』と9.11後のリアリティ—