1. 新刊書
  2. ウィリアム・D・ハウエルズ著 武田千枝子/矢作三蔵/山口志のぶ訳 『近ごろよくあること』 開文社, 2018. 1. 11. 四六版xi+632頁, \2,600

ウィリアム・D・ハウエルズ著 武田千枝子/矢作三蔵/山口志のぶ訳 『近ごろよくあること』 開文社, 2018. 1. 11. 四六版xi+632頁, \2,600

概要

本邦初訳!

 19世紀後半から20世紀初めにかけ、一流文芸誌を通じてアメリカのリアリズム文学育成に努めたハウエルズは、日本の一般読者にはなじみの薄い作家で、ここに訳出された『近ごろよくあること』はもとより、数多いこの作家の作品の邦訳書は今日にいたるまで皆無であった。海外の文学作品の翻訳紹介には積極的な我が国において珍しいことである。それはこの作家がジャーナリズムの世界に身を置いていた時間の長さゆえに生じた偏見と反発、そして多作家であったこの作家の作品の廉価版すら入手が難しいという事情によるものと思われる。

 本作品は、南北戦争終結後十年近くを経過した混乱するアメリカ社会を背景に、ひと組の若い夫婦の結婚生活が破綻をきたすまでの経緯を詳細に描いた長編小説であり、離婚という問題を扱ったおそらくアメリカ最初の小説といわれている。登場人物はアメリカの知識階級から肉体労働者まで様々な階層の人々を網羅していて、舞台はメイン州からインディアナ州までと広きにわたる。南北戦争は宗教や道徳観を含む社会のあらゆる面、レベルにおいて戦前と異なる状況を生み出し、社会をあるべき姿に復するには何が求められるかという問いに対する当時のハウエルズの解答が本作品だと言えよう。