概要
「基盤の解体」を鍵語にしてフォークナー創設の架空の土地、ヨクナパトーファを舞台にした複雑かつ難解な代表作『響きと怒り』『八月の光』『アブサロム、アブサロム!』『行け、モーセ』を読み解く!
南北戦争での敗北によってアメリカ南部で劇的に引き起こされた〈人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎ〉= 〈貴族階級の白人男性層という旧南部社会の基盤の解体〉を、〈ストーリー〉の時間と空間の基盤を解体する技法により、それがいかに強化されているのか、とスリリングな文学読解に本書は誘う。
第二部では、南部作家コーマック・マッカーシーや映画作家クエンティン・タランティーノ、イニャリトゥ、アリアガへのフォークナーの影響、そして、横溝正史の小説を比較。さらに、大橋健三郎がなぜフォークナー研究に至ったのかを考察して、日本人がフォークナーを研究することの意味を探る!
目次
序
第Ⅰ部 ヨクナパトーファ小説における旧南部解体
第1章 虚飾からの覚醒——『響きと怒り』
第2章 旧南部への直視——『八月の光』
第3章 南部貴族の起源
——『アブサロム、アブサロム!』
第4章 南部貴族の重罪——『行け、モーセ』
第Ⅱ部 フォークナー文学と現在/日本
第5章 フォークナーと現代アメリカ南部作家
——コーマック・マッカーシー
第6章 フォークナーと現代映画作家
——クエンティン・タランティーノ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ギジェルモ・アリアガ
第7章 アメリカ南部と日本のジレンマ
——横溝正史
第8章 日本におけるアメリカ文学研究の確立
——大橋健三郎