概要
本書は,アメリカ,およびカリブの文学や文化に現れる「衣装」について,「時代の目撃者」,「民族を映す」,「『衣装』という表象」,「あざむく」という章構成のもと,様々な角度から検討したものである。本書を貫くのは,「衣装」という比較的わかりやすいテーマではあるが,一見しただけでは見えにくい表象や事象が,専門の目で探求されている。
目次
序にかえて(西垣内磨留美)
第一章 時代の目撃者
飽和の時代と拘束——『アメリカン・サイコ』に見るウォール街の「衣装」(伊達雅彦)
〈革命〉をデザインする——一九六〇年代アクティヴィズムにおける〈見かけ?〉の政治学(馬場聡)
ユダヤ系アメリカ人と既製服産業——古着販売からアメリカの象徴ジーンズへ(君塚淳一)
書紀アメリカの奴隷の職種と仕事着——トマス・ジェファソンのプランテーションの場合(濱田雅子)
第二章 民族を映す
極北民族イヌイト社会にみる衣装の機能と象徴性(本多俊和〔スチュアート ヘンリ〕)
物語から読み解くチルカット・ブランケット(林千恵子)
マルディグラ・インディアンにみるフードゥーの混合主義[シンクレティズム]——イシュメール・リード『なつかしきニュー御綸子懺悔の三ヶ日』をてがかりとして(峯真衣子)
脱いで始まる、着ずに始めるカーニバルーー内と外から見るカリビアン・アイデンティティ(山本伸)
第三章「衣装」という表象
意匠あるいは衣装としての比喩(西原克政)
象徴としてのズボン——アリス・ウォーカーの『カラー・パープル』(清水菜穂)
雪のなかの豹——ポスト人種的ヴィジョンとトニ・モリスン『神よ、あの子を守りたまえ』(川村亜樹)
第四章 あざむく
隠れて騙る、隠して語る(西垣内磨留美)
ウィニフレッド・イートンの自伝小説『私』におけるファッションとその意味について中地幸
イギリスのなかのカリブ——ポーリン・メルヴィル作品にみる偽装と衣装(君塚由佳)
先住民の衣装と犯罪者の偽装——トニー・ヒラーマンのミステリーを解く(余田真也)
アメリカ喜劇映画における「女装」の文化史(中垣恒太郎)
あとがき(山本伸)