概要
「場所」とは具体的な場所であると同時に、変容するアイデンティティを位置づける空間的でメタフォリカルな場所でもある。本書は、アジア系アメリカ文学がアメリカの政治的経済的な「アジア太平洋」世界に抵抗する想像力をもって、解放の場所・空間を構築していることを論証する。
目次
序 アジア/パシフィックの文学的想像力
第1部 「アジア系アメリカ」の場所—マキシーン・ホン・キングストンのアメリカ(檀香山からシエラネヴァダ山脈へ—『アメリカの中国人』の移民と自然;サンフランシスコ、一九六〇年代—『トリップマスター・モンキー』と「猿の大王」)
第2部 チャイナタウンの地政学(「オリエンタル」な物語空間—エイミ・タンの『ジョイ・ラック・クラブ』;家族の地形図—フェイ・ミエン・インの『骨』;失われた場所から思考する—マキシーン・ホン・キングストンの『チャイナタウンの女武者』)
第3部 ヴェトナムからリトル・サイゴンへ—ヴェトナム系アメリカ人への道(記憶の風景—難民ナラティヴの故郷;モデル・マイノリティのゆくえ—レ・リ・ヘイスリップの『天と地』と『戦争の子供、平和の女』;一・五世代死者の声をきく—ラン・カオの『モンキー・ブリッジ』)
第4部 日本、ブラジルそしてヘテロポリス・ロサンゼルスへ—カレン・テイ・ヤマシタの現代の寓話(適応と生存のエコロジー—『熱帯雨林の彼方へ』の生物多様性と多民族社会;新たな都市空間の未来へ—『オレンジ回帰線』のロサンゼルス)