概要
エコクリティシズム研究学会の20年以上にわたる実績と歴史によって生み出され完成した27編の研究論文集。本書副題にある「人新世」 (Antropocene) とは地質学の用語で、人類の活動が地球環境を変化させる新たな地質年代に突入しているとする認識を示す。
目次
はじめに 松永 京子
序章
第四の波のかなた─エコクリティシズムの新たなる歴史編纂的比喩を求めて (スコット・スロヴィック/伊藤 詔子訳)
第Ⅰ部 エコクリティシズムの源泉─風景の解体と喪失
1 作家オーデュボンの先駆性─辺境の他者表象から探る (辻 祥子)
2 メルヴィルの複眼的自然観─野生消滅への嘆きから自然の猛威の受容へ (大島 由起子)
3 メルヴィルの『雑草と野草─ 一本か二本のバラと共に』を読む─自然の蘇生と自然を通しての人間の蘇生 (藤江 啓子)
4 「ナショナルな風景」の解体─ホーソーンの「主として戦争問題について」をめぐって (大野 美砂)
5 産業革命による個の発見と喪失─ソローと漱石の鉄道表象 (真野 剛)
6 マーク・トウェインの自伝と〈ミシシッピ・パストラリズム〉 (浜本 隆三)
7 ポーとポストヒューマンな言説の戦場─「使い果たされた男─先のブガブー族とキカプー族との激戦の話」 (伊藤 詔子)
第Ⅱ部 エコクリティシズムの現代的展開─語り始めた周縁
8 レイチェル・カーソンの『潮風の下で』─ヘンリー・ウィリアムソンの影響を探る ( 浅井 千晶)
9 地図制作者が描く幸福─ソローとリック・バスの挑戦と実践 ( 塩田 弘)
10 ルース・オゼキの『イヤー・オブ・ミート』とメディア (岸野 英美)
11 アラスカ先住民族の病─疫病の記憶と後世への影響 (林 千恵子)
12 アリステア・マクラウドと環境に関する一考察─故郷はいつもそこにあるのか (荒木 陽子)
第III部 SFとポストヒューマン─境界のかなたへ
13 SFにおけるエコロジー的テーマの歴史の概観 (デビッド・ファーネル/原田 和恵訳)
14 ナサニエル・ホーソーンはポストヒューマンの夢を見るか (中村 善雄)
15 ポストヒューマン・ファルスとして読む『真面目が肝心』 (日臺 晴子)
16 カート・ヴォネガットのエコロジカル・ディストピア─『スラップスティ ック』におけるテクノロジーと自然 (中山 悟視)
17 ポスト加速時代に生きるハックとジム─パオロ・バチガルピ小説におけるトウェインの痕跡 (マイケル・ゴーマン/松永 京子訳)
18 ポストヒューマンの世界─上田早夕里『オーシャンクロニクル』シリーズにおけるクイア家族 (原田 和恵)
19 日野啓三の文学における物質的環境批評─ティモシー・モートンとブライアン・イーノを手掛かりに (芳賀 浩一)
第Ⅳ部 核時代の文学─アポカリプス、サバイバンス、アイデンティティ
20 ラングストン・ヒューズの反核思想─冷戦時代を生き抜くシンプルの物語 (松永 京子)
21 ルドルフォ・アナーヤの四季の語りと核 (水野 敦子)
22 核戦争後の創世記─バーナード・マラマッド『コーンの孤島』と喋る動物たち (三重野 佳子)
23 火に生まれ、火とともに生きる─ジュリエット・コーノの『暗愁』 (深井 美智子)
24 ジュリエット・コーノ『暗愁』における有罪性─エスニック文学の新しいナラティブをめぐって (牧野 理英)
25 燃えゆく世界の未来図─マリー・クレメンツの劇作にみるグローバルな環境的想像力一 (谷 智子)
終章 聖樹伝説─ヨセミテの杜、熊野の杜 (巽 孝之)
おわりに (塩田 弘)