概要
本書は、アフリカ系アメリカ人で初めてノーベル文学賞を受賞した女性作家トニ・モリスンについての、日本で初めての論文集です。歴史・ホーム・性のテーマを柱に、多様な切口でモリスン文学の新しい側面を探求しています。
目次
序にかえて(鵜殿えりか)
第一章 『奪われた人々(家族)』と抽象表現主義への応答——『青い目が欲しい』とノーマン・ルイス(宮本敬子)
コラム 人形の系譜——バービーからアメリカン・ガールズへ(峰真衣子)
第二章 バラとセクシュアリティ——『スーラ』とテネシー・ウィリアムズの『バラの刺青』(戸田由紀子)
コラム 『ブラック・ブック』編纂の影で(木内徹)
第三章 洞窟からハウス、ホームそして飛翔へ——『ソロモンの歌』(山野茂)
第四章 時間の遠近法とポスト公民権運動時代の神話——『タール・ベイビー』再読(西本あづさ)
第五章 マギーに何があったの?——「レシタティフ」に見る母の記憶(時里祐子)
コラム アメリカ黒人の歴史に〈声〉を聴くこと(古川哲史)
第六章 主人と奴隷の弁証法から逃れる——『ビラヴド』にみる創造的言語行為(小林朋子)
第七章 「闇」が語るもの——『白さと想像力』と『ジャズ』を中心に(森あおい)
コラム ハーレム・ルネサンスと文学史編纂という作業(平沼公子)
第八章 汚染の言説——『パラダイス』における自然と女性(浅井千晶)
第九章 共食いする雌ガ二——『ラヴ』にみる裏切りの装い(深瀬有希子)
第十章 旅の表象——『マーシイ』の場合(程文清)
第十一章 「わたしたちは二度と死なない」——『デズデモーナ』におけるポスト歴史の場としての死後の世界(ハーン小路恭子)
コラム オセローを取り戻す(常山菜穂子)
第十二章 『ヘンゼルとグレーテルの変容』——『ホーム』における兄妹の闘争(鵜殿えりか)
第十三章 連鎖を解く力——『神よ、あの子を守りたまえ』における「母代わり」の意味(風呂本惇子)
トニ・モリスンの魅力——「あとがき」にかえて(松本昇)