内容紹介
なぜアメリカ文学にはダブル(一対のもの)が多いのか? 本書は19世紀アメリカに現われる分身や鏡像への強迫観念を、自国とカリブ海地域の〈アメ
リカス〉の地政空間から捉える文学評論。国内の西漸運動と対外的拡張主義のなかで他者を創出しながら自己を定位するアメリカは、独自の文学的想像力を生み
出した。植民地の記憶、奴隷制度、メスメリズム、フェミニズム、写真術などの歴史現象から生まれるダブル、その欲望と恐怖の形象のなかにアメリカ的想像力
の本質をみつめる。
目次
◆序 章 トプシー・ターヴィー・アメリカス─ポストコロニアリズムの視点から
◆第Ⅰ部 サン=ドマングの影のもとに─建国期アメリカの黙示録的ヴィジョン
第1章 追憶と恐怖のカプ・フランセ
──モロー・ド・サン=メリーとレオノーラ・サンセイが見たサン=ドマング
第2章 シンパシーと暴力・恐怖
─チャールズ・ブロックデン・ブラウンに見る建国期アメリカのセキュリティ
第3章 感受性の共和国─建国期アメリカの「誘惑」テクストを読む
◆第Ⅱ部 メスメリズム変幻─アンテベラム期の諸相
第4章 〈沈黙した身体〉を視るまなざし─19世紀視覚文化の一考察
第5章 シンパシーとメスメリズム—ナサニエル・ホーソーンのセンチメンタリズム
第6章 もうひとつのアメリカ・ルネサンス
—マーガレット・フラーとボストンの超絶主義的女性たち
◆第Ⅲ部 アメリカスのなかで─帝国化する時代と他者へのまなざし
第7章 コロニアル・シアター—メアリー・G・ローウェルとピーボディ姉妹が見たキューバ
第8章 ベアトリスは「混血」か—「ラパチーニの娘」にみる人種混淆の恐怖
◆第Ⅳ部 19世紀末アメリカの不安と欲望─差異と位置の政治学
第9章 世紀末の神経衰弱─アメリカの自画像
第10章 帝国とユートピア─北極へのファンタジー
終章 カリブ海からのトプシー・ターヴィー人形─ポストコロニアル批評にむけて